こんにちは、カリーナです。
宙組公演『パガド』~世紀の奇術師 カリオストロ~
宙組新トップコンビ・芹香斗亜さんと春乃さくらさんの、大劇場お披露目公演となります。
ところがどっこい、
あらすじ(解説)を読んで、
私はキョーレツな違和感をおぼえました。
私がおかしいと感じたのは、以下の2点です。
・タロットカードの「奇術師」は、そもそも1枚目のカードではない。
・「奇術師」のカードを、パガドと呼ぶことは一般的にはしない。
ええ?田渕先生が間違ってるの!?
もしそうだとしたら、キキちゃんの危機!!
ということで、じっくり検証していきますよ~。
目次
「奇術師」のカードは1枚目ではなく2枚目
しょっぱなからですが、
そもそもタロットカードの「奇術師」は、1枚目のカードではありません。
“パガド”とは、タロットカードの一枚目、“奇術師”のカード。
田渕先生は、あらすじ冒頭にこう書いているけど…。
違います。
タロットカードは78枚で構成され、そのうちの22枚を大アルカナと呼びます。
大アルカナのカードには、それぞれ番号がふられています。
つまり順番は、以下の通りです。
0番 愚者
1番 奇術師(魔術師)
2番 女教皇
3番 皇帝
・
・
・
19番 太陽
20番 審判
21番 世界
0番~21番で、合計22枚。
つまり、奇術師のカードは
タロットカードの「2枚目」のカードなんです。
デッキによって、一部の番号が変わることはありますが、
愚者や奇術師は、絶対にこの番号と決まっています。
だから正確に言うなら、
「奇術師は、タロットカードの番号が1番のカード」となります。
以下は、タロット占いの有名な専門書からの引用です。
<0愚者>で生まれた魂が旅をはじめ、<1魔術師>でなにかを成しとげようという意思を持ち、<2女司祭>ではじめて他人の存在を意識し……その後も様々なテーマを経験して最後の<21世界>で完成を見るのです。
引用元:LUA著「78枚のカードで占う、いちばんていねいなタロット」p20 日本文芸社
大アルカナは、0番の「愚者」というキャラクターが、21番「世界」までを旅するストーリーとなっています。
そのため、何が何でも、タロットカードの1枚目は「愚者」でないといけません。
「パガドはタロットカードの1枚目」はミヒャエル・エンデ由来?
検索して調べたところ、
「パガドは、タロットカードの1枚目」と書いてある小説が見つかりました。
ミヒャエル・エンデ著『鏡のなかの鏡』。
(誰だかわからない?『モモ』の作者だといえば、ピンとくるでしょうか)
私はこの本を読んだことはありませんが、ネットを探すと、作品の一部を引用しているページがありました。(このページ)
そこには「パガド」という聞き慣れない名前と、「タロットカードの一枚目」という説明があります。
ここから分かることは、
・少なくともミヒャエル・エンデは、タロットカードの1枚目が「奇術師」だと勘違いしていた。
・田渕先生が、『鏡のなかの鏡』を読んで参考にした可能性が高い。
ということですね。
奇術師のカードを「パガド」とは呼ばない?
さてここで、そもそもの公演名『パガド』について。
通常、タロットカードの奇術師(魔術師)のカードを、「パガド」と呼ぶことはありません。
一般的なタロットカードは、英語表記です。
奇術師なら「THE MAGICIAN」表記がメジャー。
スペイン語のものも流通しています。
つづりは「EL MAGO」です。
あとはイタリア語表記ですが、
「Il Bagatto」(イル・バガット)というのがありました。
ん?
「バガット?」
残念ながら、私が調べた限りでは、
「パガド」と発音する国の言語を見つけることができませんでした。
でも、まさか英語圏の人もね、
「THE MAGICIAN」のことを、日本では「マジュツシ」とか「キジュツシ」とか呼んでいるなんて、知らないと思うの。
もしかしたら、マイナーな国の発音では、バガットがさらに変化して「パガド」なのかもしれません。
※ミヒャエル・エンデはドイツ人だけど、ドイツ語ではなさそうでした。
ドイツ語だと「Magier」。オカルト的観点からみるタロットと「パガド」(手品師)
ネットの海はすごいですね。
「専修大学学術機関リポジトリ」に、面白い論文がありました。
ありがたく引用させていただきます↓
3 パガド(Pagad)
コップの使い手は、現在のゲームにおいては「パガド」と呼ばれる。この
名称は、われわれ西洋の言語において類似したものはなく、純粋に東洋的な
もので、巧みに選ばれたものである。「パグ」(Pag)は東洋では、長、師、主
〔 84 〕
人を意味し、「ガド」(Gad)は運命を意味する。実際、彼はヤコブの棒、あ
るいは三博士(マギ)の棒を持ち、運命を意のままにする者として表される。
ここでようやく「パガド(Pagad)」と、スペルまで書かれたものにたどり着きました!
ただ、タロットカードについての論文だけど、べつに「タロットカードの奇術師がパガド」とは書いていません。
コップの使い手→手品師(奇術師)→タロットカードの「奇術師」がパガド
こういう、連想ゲーム的なこじつけはできるけど。
でも、ミヒャエル・エンデは、こんなことまで知っていたのかしら?
コップの使い手(≒奇術師)をあらわす、ここでいうパガドというのは、完全に造語なのです。
「とある西洋人が、オカルト思想をベースに、東洋の単語を2つ組み合わせて作った名前が『パガド』だった」
というだけ。
(そもそも、どこの国の言葉だろう?東洋って広すぎるよ~)
イタリア語の「バガッド」が、これに関係しているとは思えません。。。
少なくとも「奇術師はタロットの1枚目」は間違い
なんだか、ムダに細かく検証してしまいました。
1つだけ確実なのは、「タロットカードの奇術師は、1枚目ではなく2枚目」ってこと。
「パガド」については、うやむやになりましたが…
もし田渕先生が、ミヒャエル・エンデの小説だけを参考にして「パガド」と名付けたなら、非常に危険だと思いました。
いや、もしかしたらね、
田渕先生の手元に、もっとすごいタロット占いの専門書とかがあるのかもしれませんよ。
アレクサンドル・デュマ・ペールさんが書いた「Joseph Balsamo」に、「パガドはタロットの1枚目」って書いてあるのかもしれませんよ。
でも、ネットでいくら探しても、「パガド」表記をしている占い師さんのブログ等が引っかからないということは…
そして、このほかに「パガド」という名称自体、テロリストの団体名くらいしか出てこないってことは…
そういうこと、なのだと思います。
*お願い*
誰か…芹香斗亜さんのファンの皆さん、、、
どうか「奇術師はタロットの1枚目じゃないですよ」とだけ、劇団に電話でもメールでも、してくれませんか。
このままだと、間違った内容のまま台本が書かれるかもしれません。
歌詞の中にも「奇術師はタロットの1枚目~♪」みたいなフレーズが入っちゃって、キキちゃんが変な歌を歌うハメになるかもしれません。
印刷物も、ぜんぶ間違ったままになります。
大切なお披露目公演ですからね。
ぜひ、指摘してあげてください。
もしくは、このブログ記事を、SNS等で広めてください。
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